木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)
木花咲耶姫と家族構成
木花咲耶姫は、イザナキとイザナミの孫にあたります。
イザナキ・イザナミの間に生まれた山の神・大山津見神の子として、木花咲耶姫と磐長姫が誕生しました。
木花咲耶姫は花のように儚い命を象徴する神で、磐長姫は岩のように永い命を象徴しています。
また、木花咲耶姫の夫はニニギノミコトです。
ニニギノミコトは、イザナキがイザナミから逃れた後に行った禊(みそぎ)によって生まれた太陽の神・天照大神の孫にあたります。
ニニギノミコトと木花咲耶姫の結婚騒動
ニニギノミコトは、天照大神の孫として天から地上へと降り、地上での暮らしを始めました。
そこで木花咲耶姫と出会い、一目惚れします。そして、彼女との結婚を決めました。
木花咲耶姫の親である大山津見神に結婚の申し入れをすると、大山津見神は「それなら妹の磐長姫も一緒にどうぞ」と答え、木花咲耶姫と磐長姫の両方を差し出しました。
相手が位の高い天照大神の孫だからでしょうか。なんとも大盤振る舞いですね。
しかし、ニニギノミコトは磐長姫の見た目が気に入らず、磐長姫を返してしまいます。
このとき磐長姫は深く傷つき、
「私を退けたのだから、あなたの子孫は岩のように永くは生きられないでしょう」
と呪いの言葉を残したと伝えられています。
これがきっかけで、人間に“寿命”という概念が生まれたとされています。
ニニギノミコトと木花咲耶姫はどちらも神なので、本来ならば2人の子供も神であり、不死の存在であるはずでした。
しかし、2人の間に生まれた子供は人間として誕生し、寿命を迎えると死んでしまう存在となったのです。
火の中の出産
木花咲耶姫のエピソードで有名なのは、火の中で出産したエピソードです。
木花咲耶姫はニニギノミコトの子を、結婚したその晩に身ごもります。
あまりのスピード懐妊に、ニニギノミコトは「本当に自分の子なのか?」と疑いの言葉を投げかけました。
ニニギノミコト、磐長姫の件といい、結婚初日の妊娠といい、疑い発言といい、なかなかやらかしてますね…
木花咲耶姫は深く悲しみ、自らの潔白を証明するためにある決意をします。
それがなんと大胆にも、「火の中で出産する!」というもの。
彼女は産屋(うぶや)に火を放ち、燃え盛る炎の中で出産に挑みます。
もし本当に神の子でなければ、母子ともに焼け死ぬはず。
しかし、木花咲耶姫は無事に3人の子供を産みました。
この出来事により、ニニギノミコトは彼女を信じ、潔白が証明されました。
火の中でも咲き誇る花のように美しく、強い意志を持つ木花咲耶姫は、
この伝承から「火の中でも咲く花の神」としても知られるようになりました。
このモチーフが登場する作品
『鬼灯の冷徹』
4巻 第29話「お山の泥沼姉妹」
このエピソードは、どちらかというと磐長姫にフォーカスした話です。
嫁にどうぞと差し出されたのに、ビジュアルが気に入らないからと返却されてしまった磐長姫。
その怒りと悲しみが拗らせに拗らせて、しっちゃかめっちゃかな展開になります。
いやあ、これは心中お察しいたします……!
神話のエピソードをコミカルに、かつキャラクターの感情を面白おかしく描く、『鬼灯の冷徹』ならではの回です。
6巻 第46話「プリンセスサクヤのショータイム」
木花咲耶姫の「火の中で出産」のエピソードを、オリジナルの裏話としてコミカルに描いています。
少ないページ数で日本神話の要点を押さえつつ、ニニギノミコトが太陽神の孫だというのに少し頼りない様子も表現されており、クスッと笑える描写が満載です。
神話を知っているとニヤニヤでき、知らなくてもサクッと概要を学べる構成になっています。
『呪術廻戦』
『呪術廻戦』に木花咲耶姫が直接出てくるシーンはありません。
しかし、この作品のメインキャラクター釘崎野薔薇のモチーフが木花咲耶姫ではないかという視点で考察ブログを書いています。
木花咲耶姫の生き様と、釘崎野薔薇の世界の捉え方をリンクさせて読むと、さらに『呪術廻戦』を深く楽しめるはずです。
『灰仭巫覡』
4巻 第三十一番

火の怪異に襲われた街を救うため、仭とガオが舞で神を下ろすと現れたのが……!
シリアスな展開が続く中での、まさかの神登場。読者に衝撃を与えるインパクトのある回です。
「え、木花咲耶……姫?」と思わず二度見してしまうような展開で、神話モチーフを大胆にアレンジしています。
詳細はネタバレになるので語れませんが、非常に印象的なシーンです。
『灰仭巫覡』の作品紹介はこちら。
『呪術廻戦』
『呪術廻戦』で木花咲耶姫が登場するシーンはありませんが、釘崎野薔薇のモチーフが、実は木花咲耶姫ではないか? と考えられます。
木花咲耶姫と釘崎野薔薇の生き方や人間らしさについて考察しています。併せて読んでいただくと、『呪術廻戦』をより楽しめるはず。
まとめ
木花咲耶姫の物語は、日本神話における「花のような儚さ」と「命の循環」というテーマを象徴しています。
磐長姫との姉妹関係や、ニニギノミコトとの結婚、火の中での出産エピソードなど、神話ならではのドラマが詰まっています。
漫画作品では、『鬼灯の冷徹』のコミカルな表現や、『灰仭巫覡』のシリアスな展開など、同じ神話モチーフでも異なる描かれ方がされており、読み比べることで新たな楽しみ方が広がります。
今後も、他の作品に登場する木花咲耶姫や関連する神々のエピソードを見つけたら、随時追記していきます。





