マンガ、アニメ、ゲームには、「世界の終末」を描いた作品が多くあります。
直接的な表現がなくても、考察などを読んでいると、「これは世界の終末を描いているのか!」と思わせる内容であることも少なくありません。
実はこの世界の終末論、神話や宗教と強く結びついています。
多くの神話・宗教で描かれていますが、この記事では キリスト教で描かれる「世界の終末論」 について解説します。
世界の終末論とは?キリスト教黙示録の意味
キリスト教の終末論は、
『新約聖書・ヨハネの黙示録』を中心に構築された 「世界の終わりのシナリオ」 です。
『ヨハネの黙示録』は紀元1世紀の終わりごろに書かれたとされる預言書です。
黙示録に登場する
七つの封印、四騎士、獣、666、ハルマゲドン
などは文学作品としても有名で、比喩的に「悪の権力」「社会的混乱」「人間の弱さ」などを象徴しています。
黙示録に描かれる世界の流れ(ざっくり)
黙示録のストーリーは大きく分けると次の7段階です。
- 世界の混乱の到来
- 悪の勢力の出現
- 神の裁き
- 最終戦争(ハルマゲドン)
- サタンの敗北
- 最後の審判
- 新しい世界の創造
ポイントは、終わりではなく “新しい天と地”が創造されること です。
七つの封印と四騎士:終末の始まり
世界の終末は、天上で巻物の「封印」が解かれることから始まります。
封印が1つ解かれるごとに、地上に象徴的な出来事が現れます。
特に有名なのが「四騎士」です。これは封印が解かれた際に現れる象徴的な存在で、人類が直面する 戦争・飢饉・死などの試練 を表しています。
- 白い馬:征服・支配
- 赤い馬:戦争
- 黒い馬:飢饉
- 青ざめた馬:死
これは 「人類が繰り返してきた不安・破局・暴力の象徴」 として読まれます。
終末の描写というより、むしろ 人間の歴史の縮図 とも言えるでしょう。
七つのラッパ:自然と社会の危機の象徴
七つの封印が解かれた後、天使たちは 7つのラッパ を吹き鳴らします。
ラッパの音に合わせて起こる象徴的災害には次のようなものがあります。
- 海の崩壊
- 水の汚染
- 天体の暗転
- 不吉な生物の出現
これらは 自然そのものの崩壊ではなく、人間の罪や社会の混乱によってバランスを失った世界 を象徴しています。
悪の出現とハルマゲドン:終末論のクライマックス
物語の中盤では、悪の勢力が登場します。
- 竜(サタン)
- 海から上がる獣(反キリスト)
- 地から上がる獣(偽預言者)
ここで有名な 「666(獣の数字)」 が登場します。
聖書では悪を象徴する数字とされますが、現代では単なる“悪魔コード”というより、 暴走した権力や腐敗した権威の象徴 と解釈されることが多いです。
黙示録は “悪役のキャラクター紹介” ではなく、
人間社会に潜む破壊的権力の警告 を物語化したものです。
最終決戦:ハルマゲドンの意味
黙示録のクライマックスは 善と悪の最終戦争「ハルマゲドン」 です。
ハルマゲドンは、「メギドの丘(Har Megiddo)」に由来します。これは現在のイスラエル北部にある実在の地名です。
聖書では、善と悪の最終戦争がここで起こるとされ、象徴的には “世界の秩序をかけた最後の決戦” を意味します。
ここでキリスト(メシア)が再臨し、悪の勢力を完全に打ち破ります。
サタンの敗北と最後の審判の象徴性
戦いの後、サタンは拘束され、最終的に完全に滅ぼされます。
その後、 最後の審判(Last Judgment) が行われます。
聖書では、人類全員が生前の行いによって裁かれるとされる重要な儀式です。
• 死者が復活
• 人類全員が裁きを受ける
• 正しき者と悪しき者が分けられる
裁きは罰ではなく、 世界の正義と秩序を回復するための神の行動 として描かれます。
新天新地:終末は再生の物語
黙示録の最終章は恐怖ではなく、 希望のビジョン です。
神によって新しい天と地が創造されます。
神の都が天から降り、
人間は神と直接交わりながら生きるようになります。
そこには
- 苦しみがなく
- 涙がなく
- 病気も死もない
と描かれます。
つまり、終末論の結末は
“世界が滅びる話ではなく、神と人間の完全な和解の到来” です。
「世界の終末論」が元ネタのマンガ
世界の終末論は、多くのマンガ・アニメでモチーフとして描かれています。
『聖☆おにいさん』
『聖☆おにいさん』では、「世界の終末」がギャグとして差し込まれる小ネタがたくさん出てきます。
初めてこのネタが使われたのは3巻 その16 「納涼ハンター」です。
他にも4大天使の一人、ミカエルが危うくラッパを吹きそうになる場面があったり。うっかり油断していると読み飛ばしてしまう箇所にも、
元ネタを知ると深い笑いにつながる 場面が散りばめられています。
わたしは終末論を知らずに読んでいて、「ラッパ? なに??」と疑問に思っていました。
元ネタを知ると、深刻な週末論の知識とギャグに挟まれて思わずふふっと笑ってしまいます。
『呪術廻戦』
『呪術廻戦』では直接的に世界の終末論を描くわけではありませんが、
10巻 第83話「渋谷事変①」から始まる「渋谷事変」の描写は、まるで 七つの封印と七つのラッパで世界が崩壊していく様 を彷彿とさせます。
夏油傑(羂索)と真人の行動は、終末論における “世界再構築の試み” と似ています。
詳しくはこちらの記事で考察しています。
関連記事 -> 『呪術廻戦』考察#14|渋谷事変は“神の死”だった? ― 夏油傑と真人が描く終末論
まとめ:世界の終末論がマンガに与える深み
キリスト教の終末論は、単なる恐怖の物語ではありません。
黙示録は「世界の終わり」を描きながらも、最終的には 新しい天と地の創造、神と人間の和解 という希望を示しています。
七つの封印や七つのラッパ、ハルマゲドンや最後の審判は、
人間社会に潜む不正や混乱、権力の暴走を象徴しつつ、最終的な秩序回復と再生のメッセージを伝えています。
こうした世界観は、マンガやアニメでもたびたびモチーフとして利用され、物語の深みや象徴性を増しています。
終末論の知識を踏まえて作品を読むと、単なる娯楽表現の奥にある 神話的・宗教的メッセージ まで楽しむことができます。

