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王道に飽きた方へ ―― 大人の物語をつくる旅・探究譚という構造

創作のヒント

「敵を倒して終わる物語に飽きてしまった」
「正しい答えを出さず、問いが残る物語を書きたい」

クリエイター
クリエイター

王道は分かる。でも、もうそれじゃない気がするんだよね…

MangaHiyori
MangaHiyori

それなら、世界を“変える”のではなく、世界と出会い続ける構造――旅・探究譚を考えてみるのはどうでしょう?

多くの物語は、次のような明確な構造を持っています。

よくある構造

こレラの構造は強力です。
しかし、常に「答え」が用意され、「勝利」で終わる設計に、どこか息苦しさを感じることもあるでしょう。

そこで視点を変えてみましょう。

答えが出ないまま終わる、世界が変わらないまま通り過ぎる、主人公が正義にならない。
それでも、読後に深い余韻が残る型があります。

それが 旅・探究譚 です。

旅・探求譚とは

この型を理解すると、「勧善懲悪に違和感がある」、「大人向けの静かな物語を書きたい」、「問いを残すエンディングにしたい」といった創作の悩みに答えが得られるようになります。

この記事では、旅・探究譚の視点から、敵と勝利に依存しない物語の設計方法を解説します。

この記事はこのような人にオススメです
  • 漫画や小説を創作しているクリエイターさん
  • 物語を動かしているのに「何も変わっていない」と感じることがある
  • 敵や事件ではなく、世界や価値観そのものを描きたいと考えている
  • 主人公を成長させたいが、分かりやすい覚醒や成長に頼りたくない
  • 長編や連作で、同じ構造の繰り返しになっていることに悩んでいる
  • 明確な答えや結論を出さずに、読後に余韻や問いを残す物語を作りたい
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旅・探究譚という「出会い続けることで深まっていく物語の型」

旅・探究譚の型

旅・探究譚とは、主人公が世界を巡りながら、さまざまな価値観や現象と出会い、その過程で“世界との距離”が変化していく物語の型です。

基本構造

旅・探求譚の基本構造

重要なのは、これは勝利の物語でも、理想実現の物語でもないという点です。

旅・探究譚のポイントは、問題を解決することではなく、出会いと問いの過程を描くことにあります。

ポイント

「英雄譚」「貴種流離譚」「旅・探究譚」の違い

クリエイター
クリエイター

旅をする物語というと、貴種流離譚や英雄譚とは違うの?

MangaHiyori
MangaHiyori

貴種流離譚や英雄譚もまた、旅や冒険をしながら何かを得る物語です。
それぞれ違いを見てみましょう。

物語を動かすもの変わるもの取り戻せないもの成功の定義
英雄譚行動と挑戦世界・秩序・社会かつての世界の均衡世界を変えられたか
貴種流離譚身分の喪失と漂泊社会的立場・自己像元の居場所・身分本来の立場を取り戻せたか
旅・探究譚遭遇と問い世界との距離・価値観無垢な視点・単純な正解問いを持ち帰れたか

このように並べてみると、それぞれ異なる役割と強みがあることが分かります。

英雄譚は「世界を動かす」物語。
貴種流離譚は「立場を揺さぶる」物語。
旅・探究譚は「視点を揺らす」物語。

どの型を選ぶかによって、物語が「何を動かし、どこで元に戻れなくなるのか」は大きく変わってきます。

ポイント

同じ旅する物語でも、どの物語の型を選ぶのかを意識することが重要です。

上記ポイントを確認し、もし描きたいものが英雄譚や貴種流離譚だった場合は、次の記事をチェックしてみましょう。

物語のワンパターン化を防ぎつつ、基礎も抑えたい方はこちらがオススメ👇

主人公が強すぎてつまらなくなってしまう悩みがある方はこちらがオススメ👇

神話に見る旅・探究譚

クリエイター
クリエイター

旅・探求譚がまだピンと来ないな

MangaHiyori
MangaHiyori

旅・探求譚の代表例である神話を見てみるとわかりやすいはず。

世界を支配するのではなく、世界を巡りながら「人間とは何か」「生とは何か」を問い続ける。

この構造もまた、神話における非常に重要な物語の型です。

ここでは、オデュッセウス(ギリシャ神話)ギルガメッシュ(メソポタミア神話)を例に見てみましょう。

物語タイプ旅の動機特徴
オデュッセウス帰還探究型故郷へ帰るための長い漂泊怪物や神々と遭遇しながら、人間の知恵と限界を知る旅。「無事に帰る」ことが目的
ギルガメッシュ不死探究型親友の死をきっかけに永遠の命を求める死を超えようとする旅の果てに、人は死すべき存在であると悟る。
  • オデュッセウス
    → 異界を巡りながらも、最終的に「自分の居場所」に戻る旅。世界を動かすのではなく、世界を経験し尽くすことで成熟する探究譚。
  • ギルガメッシュ
    → 喪失から始まり、究極の答えを求めて旅に出るが、最後に得るのは“不死”ではなく「人間であることの受容」。

一見すると、オデュッセウスは冒険譚の英雄、ギルガメッシュは王の叙事詩で、壮大な武勇の物語に見えます。

しかし、どちらも共通しているのは、世界を巡ることで認識が変わっていく点です。

世界は最終的に大きく書き換わるわけではありません。
変わるのは、どう受け止めるかです。

それぞれの旅・探究譚を、もう少し詳しく見ていきましょう。

ギリシャ神話:オデュッセウスの場合

帰るために後悔をするオデュッセウス

旅・探究譚の基本構造

① 旅立ち(または移動の開始)
オデュッセウスの旅は、トロイア戦争の勝利後から始まります。

戦争には勝利しました。
名誉も得ました。
しかし物語はそこで終わりません。

彼は故郷イタケへ帰るため、海へと出ます。

当時の状況

ここで重要なのは、オデュッセウスの旅が新たな冒険ではなく、帰るための移動だという点です。

彼の探究は、自分がどこへ帰る存在なのかを確かめる旅として始まります。

② 異なる世界・価値観との遭遇

旅の途中、彼は数々の異界と遭遇します。

遭遇する世界の例

これらは単なる障害ではありません。

それぞれが、人間がどう生きるかという別の可能性を提示しています。

忘れて生きるか。
力で支配するか。
永遠に留まるか。
死を受け入れるか。

旅は選択の連続です。

③ 問いの発生

異界を巡るたびに、問いが生まれます。

発生する問い

オデュッセウスが旅で出会ったニンフのカリュプソは彼に「不死」を提示します。
そこに留まれば、苦しみも老いもありません。

しかしそれは、人間であることを手放す選択でもあります。

ここでの問いは、生き延びられるかではなく、どの在り方を選ぶのかです。

④ 距離の変化(理解・受容・保留)

最終的にオデュッセウスは帰還します。

世界は大きく変わりません。
変わったのは、彼の視点です。

旅の果てに起きたこと

彼は世界を変えません。
世界の真理を解明するわけでもありません。

しかし、世界を巡ったうえで、自分の居場所を選び直す
これがオデュッセウスの旅・探究譚です。

オデュッセウスは単なる冒険英雄ではありません。

彼の物語は、
勝利 → 漂泊 → 異界との遭遇 → 有限な人間性の受容
という構造を持っています。

オデュッセウス旅・探究譚のポイント

単なる冒険譚ではなく、
人間であることを選び直す旅・探究譚として成立しています。

メソポタミア神話:ギルガメッシュの場合

不死になる方法を得るために旅をするギルガメッシュ

旅・探究譚の基本構造

① 旅立ち(または移動の開始)
ギルガメッシュの旅は、親友エンキドゥの死から始まります。

彼はウルクの王であり、怪物フンババを討ち、天の牡牛を退けた英雄でした。

力も名声も持っていた。
王として都市を築いた。

しかし、死だけは退けられませんでした。

当時の状況

ここで重要なのは、彼の旅が征服のためではなく、死から逃れるための移動だという点です。

彼の探究は、死なない方法を見つける旅として始まります。

② 異なる世界・価値観との遭遇

旅の途中、彼は人間世界の外縁へと向かいます。

遭遇する世界の例

特にウトナピシュティムは、実際に不死を得た唯一の人間です。

③ 問いの発生

ウトナピシュティムは語ります。

不死は努力の結果ではなく、神々の特別な判断による例外である、と。

さらに彼は六日七晩、眠らずにいるよう試練を与えますが、ギルガメッシュは起きていられず、試練に失敗します。

突きつけられる問い

彼は不死になる方法は得られなかったものの、ウトナピシュティムの助言で若返りの草を手に入れます。
しかしそれも蛇に奪われてしまいます。

つまり、不死は、二度にわたって手に入れられませんでした。

ここでの問いは、どうすれば死なずに済むかから、死ぬ存在として何を残すのかへと変質していきます。

④ 距離の変化(理解・受容・保留)

最終的にギルガメッシュはウルクへ帰還します。

彼は不死を得ていません。
神にはなっていません。

変わったのは、彼の視点です。

旅の果てに起きたこと

ギルガメッシュは、死を超えませんでした。
しかし、死ぬ存在として何を築くかを理解します。

ギルガメッシュは単なる怪物退治の英雄ではありません。

彼の物語は、
栄光 → 喪失 → 不死の探究 → 人間的有限性の受容
という構造を持っています。

ギルガメッシュ旅・探究譚のポイント

単なる英雄譚ではなく、死を超えられない存在として生きる意味を探す旅・探究譚として成立しています。

もっと旅・探求譚について学びたい方へ

ここで扱った神話のキャラクターや物語の型は、「どのように旅をし、何を持ち帰ったか」応用できる要素が豊富に含まれています。

note 【神話×漫画】創作のための神話構造分析 では、神話と漫画を創作視点で分析しています。ぜひ覗いてみてください。

現代作品に受け継がれる「旅・探究譚」の形

クリエイター
クリエイター

なんとなくわかったような気もするけど、掴みどころがないね

MangaHiyori
MangaHiyori

スカッとするものではないですからね。
旅・探求譚に該当する現代作品も見てみると、さらにイメージしやすくなるかもしれません。

現代作品における旅・探究譚は、「目的地に到達する」「謎を解き明かす」といった分かりやすいゴールが用意されないことも多いです。

重要なのは、旅を通して、世界との距離や向き合い方がどう変化したかです。

現代作品における旅・探究譚の代表例として、『キノの旅』、『蟲師』、『葬送のフリーレン』を見てみましょう。

作品名特徴旅の役割到達点
キノの旅観測型世界を理解せず「見る」判断を下さずに去る
蟲師調停型世界の歪みを整える元に戻らない日常の継続
フリーレン回顧型過去と向き合い直す遅れて訪れる理解
  • キノの旅』
    → 世界を変えず、答えも出さず、 「そういう世界がある」という事実だけを持ち帰る旅・探究譚
  • 『蟲師
    → 問題を解決しても完全な救済はなく、人と世界が不完全なまま共存する状態へ戻す旅・探究譚
  • 『葬送のフリーレン』
    → 冒険の“後”から始まり、時間差で感情や意味を理解していく旅・探究譚

共通しているのは、旅によって大きく事態が変わるわけではないという点です。

その代わり、登場人物の世界に対する認識や受け取り方が変化します。

それぞれの作品について、旅と探究がどのように物語を成立させているのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

現代作品:『キノの旅』の場合

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旅・探究譚の基本構造

① 旅立ち(または移動の開始)
『キノの旅』は、明確な事件や目的から始まりません。

世界を救う使命も、帰るべき故郷も、達成すべきゴールも提示されないまま、キノは相棒のエルメスとともに旅を続けています。

当初の状況

ここで重要なのは、キノの旅が何かを取り戻すためでも、変えるためでもないという点です。

この旅は、世界を理解するための移動ですらないところから始まります。

② 異なる世界・価値観との遭遇

キノは旅の途中で、数多くの「国」を訪れます。

訪れる世界の例

これらの国は、異世界でも、異常事態でもありません。

それぞれが、そういう特徴を持っ世界の姿です。

善悪の判断は提示されますが、正解は与えられません。

キノは、そこに長く留まらず、原則として「三日間」だけ滞在します。

③ 問いの発生

キノの旅で生まれる問いは、強く主張されることはありません。

発生する問い

重要なのは、これらの問いにキノ自身が明確な答えを出さない点です。

キノは世界を変えません。
革命も、説得も、救済も行いません。

問いは、読者の側にそのまま手渡されます

ここでの探究は、答えを見つけることではなく、判断を急がない姿勢そのものにあります。

④ 距離の変化(理解・受容・保留)

キノは旅を終えません。

毎話ごとに、世界はリセットされるかのように見えます。

しかし、完全に同じではありません。

旅の果てに起きていること

キノが得るのは、結論ではなく、世界との適切な距離感です。

世界は変わらず、キノも劇的には変わりません。

それでも、世界を断定しない視点だけが、少しずつ積み重なっていきます。

キノは英雄ではありません。
探求者でも、改革者でもありません。

『キノの旅』の物語は、
移動 → 固定された価値観との遭遇 → 判断の留保 → 次の世界へ
という構造を持っています。

『キノの旅』旅・探究譚のポイント

単なるロードムービーでも、哲学的寓話でもなく、 「答えを出さないこと」を引き受ける大人の旅・探究譚として成立しています。

現代作品:『蟲師』の場合

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旅・探究譚の基本構造

① 旅立ち(または移動の開始)
『蟲師』は、世界の危機や大きな事件から始まる物語ではありません。

主人公ギンコは、使命を掲げることもなく、ただ「蟲」と呼ばれる存在に関わる事象を求めて各地を歩いています。

当初の状況

ここで重要なのは、ギンコの旅が世界を救うための移動ではないという点です。

この旅は、壊れたものを正すためではなく、起きている現象と向き合うための移動として始まります。

② 異なる世界・価値観との遭遇

ギンコが遭遇するのは、人間の理解を超えた存在。
「蟲」と、それに影響される人々の暮らしです。

遭遇する世界の例

蟲は、善でも悪でもありません。
人間の倫理や価値判断とは無関係に存在する仕組みです。

ギンコは、それを討伐する存在ではなく、「観測し、対処法を探る存在」として関わります。

③ 問いの発生

『蟲師』で生まれる問いは、正義や勝利を問うものではありません。

発生する問い

重要なのは、これらの問いに明確な正解が用意されていない点です。

ギンコは万能ではありません。
すべてを救うこともできません。

時には、誰かが何かを失う結末を、止められずに見届けることもあります。

問いは、解決されるというより、その土地と人間が引き受ける形で残されます

④ 距離の変化(理解・受容・保留)

物語の終わりで、世界が大きく変わることはほとんどありません。

しかし、人と世界の距離は、わずかに変化します。

旅の果てに起きていること

ギンコ自身も、劇的な成長や変化を遂げるわけではありません。

それでも、世界の不可解さを抱えたまま歩き続ける姿勢だけが、物語を通して積み重なっていきます。

ギンコは英雄ではありません。
改革者でも、裁定者でもありません。

『蟲師』の物語は、
移動 → 人知を超えた存在との遭遇 → 答えの出ない問い → 折り合いとしての別れ
という構造を持っています。

『蟲師』旅・探究譚のポイント

単なる怪異譚でも、説教的な寓話でもなく、世界の不可解さと共存することを描いた、大人の旅・探究譚として成立しています。

現代作品:『葬送のフリーレン』の場合

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旅・探究譚の基本構造

① 旅立ち(または移動の開始)
『葬送のフリーレン』の旅は、魔王討伐の「後」から始まります。

英雄たちは称えられ、物語は終わったはずでした。

しかし、エルフであるフリーレンにとって、その出来事は「ほんの一瞬の出来事」に過ぎません。

当初の状況

ここで重要なのは、この旅が世界を救うためのものではないという点です。

フリーレンの旅は、すでに終わった物語を、後から理解し直すための移動として始まります。

② 異なる世界・価値観との遭遇

旅の途中でフリーレンが出会うのは、新たな敵や脅威ではありません。

彼女が向き合うのは、「時間の流れ方が違う者たち」と、「すでに失われた関係の痕跡」です。

遭遇する世界の例

フリーレンは、世界を冒険するのではなく、過去と現在の間を行き来するように旅を続けます

③ 問いの発生

『葬送のフリーレン』で生まれる問いは、非常に静かで、個人的なものです。

発生する問い

フリーレンは、仲間を失って初めて、「知ろうとしなかった自分」に気づきます。

ここでの問いは、 過去を取り戻せるかではありません。

取り戻せない時間と、どう向き合い続けるのか です。

④ 距離の変化(理解・受容・保留)

世界が大きく変わることはありません。

しかし、フリーレンの「人との距離」は確実に変化していきます。

旅の果てに起きていること

フリーレンは、何かを成し遂げた英雄になるわけではありません。

人を知ろうとし続ける存在へと、静かに変わっていきます

『葬送のフリーレン』の物語は、
物語の終わり → 時間のズレとの遭遇 → 後悔から生まれる問い → 人との距離の更新
という構造を持っています。

『葬送のフリーレン』旅・探究譚のポイント

単なる後日譚でも、成長物語でもなく、終わった物語を引き受け直す、大人の旅・探究譚として成立しています。

もっと漫画の分析を見たい方へ

ここまで見てきたように、神話的な物語構造は、現代の漫画やアニメにも形を変えて受け継がれています。

note【神話×漫画】創作のための神話構造分析 では、こうした神話を現代作品にどう落とし込んでいるか分析しています。

「神話 × 漫画 × キャラクター設計」を効率的に調べられるため、創作にかかる調査時間を大幅に削減できます。ぜひ活用して下さい。

旅・探究譚の型を使うポイント

旅・探究譚を作るポイント

旅・探究譚は、世界を救ったり、問題を解決したりするための物語構造ではありません。

この型が描くのは、世界を巡る中で、主人公と世界の関係性そのものが更新されていく過程です。

旅・探究譚の視点で見ると重要なのは、単に「移動すること」や「多くの場所を訪れること」ではなく、異なる世界や価値観が、主人公の問いや立ち位置にどう作用するかです。

旅・探究譚の型を利用する具体的な手順を見ていきましょう。

① 旅の動機を「目的」ではなく「状態」として設定する

旅・探究譚では、明確なゴールや達成条件を置かない方が良いです。

重要なのは、主人公が「何をしたいか」よりも、どんな状態に置かれているかです。

旅は、何かを得るためではなく、その状態のまま動き続けざるを得ない状況として始まります。

ここで無理に使命や目標を与えると、旅・探究譚ではなく、英雄譚や貴種流離譚の物語に寄ってしまいます。

② 異界や他者を「試練」ではなく「別の前提」として配置する

旅の途中で出会う世界や人物は、主人公を成長させるための壁や敵である必要はありません。

重要なのは、それぞれが別の価値観や前提で成立している世界であることです。

ポイント

立ちはだかる困難は、乗り越えるべきものではなく、主人公の立ち位置や価値観を可視化する存在として機能します。

ここで異界を攻略対象にしてしまうと、旅は探究ではなく征服になってしまいます。

③ 問いを「深める」構造にする

旅・探究譚において、問いは解決される必要はありません。

むしろ、旅を通して問いの形が変わっていくことが重要です。

問いは回収するものではなく、更新されていくものです。

この変化が描かれないと、旅は点の連続にしかなりません。

④ ゴールを「到達」ではなく「距離の確定」に置く

旅・探究譚の終点は、
世界が変わる場所でも、
主人公が完成する地点でもありません。

ゴールとなるのは。主人公と世界の距離感が、一時的に定まる瞬間です。

これは成長というより、現在置かれている立ち位置や価値観の再認識に近い変化です。

そのため、物語は終わっても、旅そのものは続いているように感じられます。

旅・探究譚設計のポイント

旅・探究譚は、ドラマを大きくしなくても成立します。

特徴

その代わりに必要なのは、世界とどう向き合い続けるのかという姿勢です。

旅・探究譚とは、答えを提示する物語ではなく、答えを持たないまま進むための物語構造です。

この視点を持つことで、王道や明快な勝利に飽きた読者に向けた、静かで深い“大人の物語”を設計できるようになります。

旅・探究譚の失敗例

旅・探究譚の失敗例

「旅の物語を書いているのに印象に残らない」
「何も起きていない感じがする」

問題は、移動距離や訪れた土地の数ではありません。

重要なのは、旅を通して、主人公と世界の関係がどう変化したのかです。

よくある失敗を3つ見ていきましょう。

① ただ移動しているだけで終わる

最も多い失敗が、旅が「舞台の切り替え」に留まってしまうケースです。

この構造自体は間違いではありません。

しかし、各エピソードが主人公の内面や価値観に影響を与えていない場合、旅は単なる背景変更にしかなりません。

旅・探究譚において重要なのは、「どこへ行ったか」ではなく、その場所が主人公の問いに何を突きつけたかです。

移動が多いほど、逆に物語が薄く感じられてしまう原因になります。

② 世界や他者の価値観を消費してしまう

異なる文化や価値観を描いているつもりが、実際には「変わった世界を見せて終わり」になっているケースもあります。

それらが登場しても、主人公がすぐに理解し、すぐに去ってしまう。

この構造では、異界は「ネタ」として消費されるだけです。

旅・探究譚における異なる世界は、乗り越える対象でも、裁く対象でもありません

理解できないまま、答えを出せないまま、距離を保って通過する。

その「消化しきれていない感覚」こそが、大人向けの旅・探究譚の核になります。

③ 問いが回収されすぎてしまう

物語としてまとめようとするあまり、最後にすべての問いを回収してしまうのも、旅・探究譚では失敗になりやすいポイントです。

これはカタルシスがある一方で、旅・探究譚特有の余白を失わせてしまいます。

旅・探究譚は、答えを出す物語ではありません

変わるのは世界そのものではなく、主人公と世界の「距離感」です。

完全に解決される必要はありません。

むしろ、問いを抱えたまま歩き続けられるようになったか が、この型における「到達点」になります。

旅・探究譚で意識したいこと

旅・探究譚の失敗は、派手さや事件不足から起きるのではありません。

ポイント

旅・探究譚とは、世界を変える物語ではなく、世界とどう距離を結び直すかを描く物語です。

その変化が描かれていないと、どれだけ旅をしても、読後に「何も残らない物語」になってしまいます。

逆に言えば、この点を意識するだけで、旅・探究譚は一気に“大人の物語”として立ち上がってきます。

まとめ:旅・探究譚を考えるときの視点

旅の末に何かを悟る主人公

「旅をさせているのに、何も起きていない気がする」
「雰囲気はあるけれど、読後に残るものが弱い」

そう感じたとき、事件を増やしたり、舞台を派手にしたり、結末に答えを用意する必要はありません。

重要なのは、どれだけ遠くまで旅したかではなく、主人公がその旅の中で、世界とどう向き合い続けたかです。

旅・探究譚において問われているのは、成果や到達ではありません。

ポイント

派手な目的や明確なゴールを用意する必要はありません。
重要なのは、キャラクターがどんな問いを抱え、何が分からないままで、どんな距離感で世界と向き合うのか。

そこが定まったとき、旅・探究譚は 「移動するだけの物語」から、読者の中で問いとして残り続ける物語へと変わります。

旅・探究譚とは、答えを提示する構造ではなく、答えを持たないまま歩き続けることを肯定する物語の型です。

その視点を持つだけで、静かで、成熟した、大人の物語は確かに立ち上がってきます。

クリエイターのための神話分析

クリエイター向け創作のヒント

ここまで見てきたように、神話的な物語構造は、現代の漫画やアニメにも形を変えて受け継がれています。

note 【神話×漫画】創作のための神話構造分析では、こうした神話キャラを「現代作品に落とすとどう機能するか」という視点で、神話キャラクター別に分析しています。

「神話 × 漫画 × キャラクター設計」を効率的に調べられるため、創作にかかる調査時間を大幅に削減できます。ぜひ活用して下さい。

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