今回はベロニカについて解説していきます。
「ベロニカって…だれ?」と思った方も多いかもしれません。
『聖☆おにいさん』を読んでいる方なら、「ああ、あのベロニカね」とすぐに思い浮かぶかもしれません。
しかし、ベロニカが実際にどのような人物なのかまで知っている方は、意外と少ないのではないでしょうか。
今回は、キリストの物語の中でベロニカが登場するエピソードに焦点をあてて紹介していきます。
ベロニカ
ユダヤの時代背景とキリストの登場
キリストが生きていた時代、彼の故郷であるユダヤでは、唯一神ヤハウェを崇めるユダヤ教が主流でした。
ユダヤ教は細かいルールが多くありました。例えば、
- 安息日には仕事をしてはいけない。
- 火を使ってはいけない。
- 一定距離以上歩いてはいけない。
など。
人々はそんなルールをただ守るだけであって、形式的なものになっていました。
会社でもよくありますよね。「ルールを守ること」が目的になっていて、そもそもの意味が見失われてる――そんな状態です。
キリストはそんな状況を打破しようとします。「神の愛」「人の平等」「赦し」を説き、律法よりも心のあり方を人々に伝えました。
この行動が、当時のユダヤ教を批判する形となり、のちにキリスト教という信仰の流れへと発展していきました。
キリストの対立と裁判
イエスの教えが広がるにつれ、ユダヤ教の指導者たちは危機感を抱くようになりました。民衆のイエスへの支持が高まるほど、自分たちが民衆を支配する力が弱まるのを恐れたのです。
当時、ユダヤはローマ帝国の支配下にあり、処刑権はローマ当局が握っていました。ユダヤ教指導者たちは、ローマ帝国を巻き込み、イエスを処刑するよう仕向けました。
こうしてイエスは、ローマの裁判によって死刑を宣告されます。
十字架の道行き
イエスはボッコボコに拷問された挙句、巨大な十字架を背負わされて、処刑場へと続くゴルゴタの丘を歩かされます。
メル・ギブソン監督の映画『パッション』では、イエスが拷問され、ゴルゴタの丘を登り、磔にされて死に至るまでのシーンが生々しく描かれています。残酷な描写が続くため心臓に悪い場面も多いですが、キリストが受けた苦しみを想像するのに参考になるかもしれません。

途中で倒れそうになるイエスを見て、民衆や通りかかった人々は同情の目を向けました。その中の一人がベロニカです。
ベロニカと「聖なる布」
ベロニカは、苦しむイエスを哀れに思い、自分の布でイエスの顔を拭います。
すると不思議なことに、その布にイエスの顔の形がくっきりと残ったと伝えられています。
この布は「聖なる布(ヴェロニカの布)」として後世に語り継がれ、イエスの苦難と人々の慈悲を象徴するエピソードのひとつとなっています。
このモチーフが登場する作品
『聖☆おにいさん』
2巻 第12話「むくむく王子⁉︎」
この作品では、ベロニカが初登場するのはこの回です。
ベロニカの上記エピソードを踏襲しつつ、ちょっとコミカルな方法で登場するため、元ネタを知っていれば「そうきたか〜」とニヤニヤしてしまうこと必至です。
この回の後も、まあまあな頻度で出てきてはクスッと笑えます。
まとめ
ベロニカの物語は、キリストの十字架の道行きの中で描かれる「慈悲」と「奇跡」の象徴です。
苦しむキリストを思いやり、自分の布で顔を拭ったことで、その布にキリストの姿が残ったというエピソードは、後世まで語り継がれています。
『聖☆おにいさん』のような作品では、このエピソードをコミカルにアレンジしており、元ネタを知っているとさらに楽しめる構造になっています。
キリストの物語の中で登場するベロニカを理解することで、漫画や作品を読む際の見方もより深まるでしょう。


